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借地の更新料をめぐるトラブル|借地人・地主がそれぞれ取るべき対応とは

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借地の更新料が原因となり、地主と借地人の間で揉めることがあります。このお金に関しては法律上の明確な規定がなく、支払い義務や金額の妥当性について見解の相違が生じやすい状況となっています。

実際にどのようなトラブルが起こっているのか、当記事では更新料をめぐるトラブルの例を取り上げ、借地人・地主それぞれの立場からみた適切な対応方法について解説していきますのでぜひ参考にしてください。

 

更新料の支払い拒否と契約解除の問題

借地契約の更新時に発生する更新料は、しばしば当事者間の対立を引き起こす要因となっています。地主側は契約継続の対価として更新料を求める一方、借地人側はその妥当性や法的根拠について疑問を持つケースが少なくないためです。

具体的には次のような形で問題が発生します。

 

  • 契約書に更新料に関する特約が明記されていないことを理由に、借地人が支払いを拒むケース
  • 法定更新(当事者の合意なく法律上当然に更新される場合)と合意更新(当事者の合意に基づいて更新される場合)の解釈の違いによる対立
  • 地主が相場を大きく上回る高額な更新料を請求しており、借地人が支払いを拒否するケース

 

こうした支払い拒否に対し、地主側が契約解除を通知するという対抗手段に出ることもあるでしょう。

過去には、更新料の支払いに関する合意を借地人が履行せず借地契約の解除を認める判決が下されたこともあります。ただし、[更新料を支払わない=契約解除]が常に成り立つわけではなく、支払いについての特約の有無や、契約期間中の借地人による違反行為の有無など、さまざまな要因が絡み合って判断されますので結局のところ個別の状況を見ていかないといけません。

 

更新料の額が問題となることもある

更新料の支払い自体に合意があっても、その金額が争点となり当事者間で合意に至らないというケースもあります。

一般的には、住宅地における借地権の更新料は「借地権価格の5%程度」が相場とされています。ただし、地域によって差異があり、特に首都圏などの都市部では相場がやや高めになる傾向があります。また、事業用地や商業用地の場合は、収益性を反映して金額を定めることもあるでしょう。結局のところ当事者間の話し合いによって決める必要があります。

 

借地の更新料は必須か?

法律上、更新料の支払い義務は当然に発生するものではありません。更新料の支払いが必要かどうかは当事者間の合意内容によって決まるものです。

そして更新料支払いの合意形成には、次の2つのパターンが考えられます。

1つは、更新時に地主と借地人が話し合って更新料の額を決定して支払う「合意更新」のケースです。この場合は双方が納得したうえでの取り決めであるため、トラブルに発展する危険性は小さいといえるでしょう。
そしてもう1つ、前回の更新時に次回の更新に関する取り決めをしておくパターンもあります。契約書に「次回更新時には更新料として借地権価格の○%を支払う」といった条項を盛り込んでおく方法です。この場合、当該条項に基づいて更新料の支払い義務が生じることになります。

そして問題となりやすいのが「法定更新」のケースです。

法定更新とは、当事者間で更新についての合意が成立しなくても、法律(借地借家法)の規定によって自動的に契約が更新される仕組みを指します。法定更新の場合でも、先述の2つ目のパターンのように、前回の契約で次回更新時の更新料支払いについて明確に合意していれば、その支払い義務は発生します。しかし、そのような事前の合意がない場合には法定更新における更新料の支払い義務は生じないと考えるべきでしょう。

そして、もし過去に更新料を支払ったという背景があっても、それだけで当然に次回の支払い義務が確定するものではありません。「前回支払ったから今回も支払うべき」という地主側の主張は必ずしも通るものではないのです。

ただし、実務上は地主との良好な関係維持のために、適正な金額であれば更新料を支払うことが紛争予防の観点から推奨される場合もあります。専門家の意見も取り入れながら、適切な対応を検討しましょう。

 

更新料トラブルへの対処法

借地の更新料をめぐって訴訟など大きな揉め事に発展しないよう、借地人も地主も、以下の点に配慮しながら対処していきましょう。

 

借地人側の対応

借地人側としては、以下の対応を意識すると良いです。

 

契約条項のチェック

まず、契約書に更新料の支払いに関する条項があるのかを確認する。条項が存在しない場合は支払義務も発生せず、法定更新を根拠に契約継続を主張する。

供託制度の活用

「更新料を支払う意思はあるものの金額について合意に至らない」という場合、借地人は供託の制度を活用すると良い。供託とは債務の履行のために金銭等を法務局に預ける制度のことで、これによって一方的に支払いを拒否しているわけではないという姿勢を示すことができる。

契約解除への対策

地主が更新料不払いを理由に契約解除を通告する場合、①契約条項の有無や明確性、②背信的行為の有無、③契約違反の有無と重大性、などの要素が争点となりやすい。弁護士に相談して評価してもらい、その後の対処についてアドバイスをもらう。

 

また、地主との良好な関係を維持することがトラブルの予防につながるため、普段のコミュニケーションの取り方などにも配慮しておくと良いでしょう。

 

地主側の対応

地主側としては、以下の対応を意識すると良いです。

 

有効な契約条項を設ける

地主が更新料請求を確実に行うためには、契約書に更新料の支払いに関する条項を明記することが不可欠。具体的な金額、あるいは具体的な金額を算出できる計算方法を示しておくべき。

契約解除の要件判定

更新料の支払い義務がある状況下で借地人が支払ってくれない場合、「重大な契約違反」「借地人による背信的行為」などの要素も加味して、専門家にも相談しながら契約解除ができないか検討する。

代替措置の検討

単純な契約解除のほか、賃料の増額請求や建物買取請求権の行使など、別の手段も併せて検討する。ただし賃料の増額なども一方的に決定できるものではないため、借地人との協議や法的根拠の提示が重要。

 

地主としても相手方との良好な関係構築が重要ですので、感情的な対立関係が強まる前に専門家を間に入れるなどして建設的な話し合いを進めましょう。