佐々木泉・水沼直己法律事務所 > 記事コンテンツ > 法定相続人として認められる人・認められない人|相続の基本的なルールを解説
遺産を受け継ぐ権利を誰が持つことになるのかご存知でしょうか。その人物については民法で定められており、法定相続人になることで相続する権利が得られます。
では法定相続人になれるのはどのような方なのか、その条件や反対に相続権を失うケースなど、「相続できるかどうか」に関わる基本的なルールをここで紹介します。
法定相続人を簡単に説明すると「民法によって相続する権利があると定められた人」といえます。
遺言書がない場合は、この法定相続人が故人の財産を相続することとなります。
重要なのは、「親族であれば誰でも相続できる」というわけではない点です。法律で相続人になれる人の範囲と順位が規定されており、たとえば兄弟姉妹の配偶者やいとこなどは相続できません。
また、「法定相続人であることと、実際に財産を受け取ることは別の話である」という点も留意しておきたいです。遺言書によって法定相続分とは異なる配分になることがありますし、自ら相続を拒絶することもできます。
民法では、相続の「順位」が定められています。もし上位の順位の人がいるなら下位に区分されている人は相続できません。
順位が問題となるのは、亡くなった方の血族にあたる親族です。要は以下の人物が法定相続人なれる可能性を持ち、順位が高く定められた人ほど実際に相続人となる可能性が高くなるといえるでしょう。
よって、もし亡くなった人に配偶者と子どもがいる場合、親や兄弟姉妹がいたとしても相続の権利を得るのは配偶者と子だけに限られます。
上記の順位に配偶者(夫・妻)は含まれていませんが、優先順位が低いわけではありません。反対に、もっとも特別な扱いを受ける存在であるといえます。
実際、法律上も配偶者は常に相続人になれる旨明記されており、共同相続する方が上記のどの順位であっても関係なく相続する権利を得ます。
ただし、婚姻届が受理されておらず内縁関係にとどまるケースでは、どれだけ長く一緒に暮らしていても相続人にはなれません。
相続人に該当する場合でも、特定の条件下では相続する権利を失うことがあります。
1つは「放棄」と呼ばれる行為により発生します。ただしこれは遺産に多額の借金が含まれているようなケースであり、相続人が自らの意思で決断する行為です。
放棄とは別に、相続人が遺産を受け取りたいと考えていてもその権利をはく奪されてしまうのが、「欠格」と「廃除」が生じるケースです。
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欠格とは |
廃除とは |
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故意に被相続人を死亡させた場合など、法律で定められた重大な非行があると、自動的に相続権を失う。
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被相続人への虐待や重大な侮辱があった場合、被相続人の請求を発端に、家庭裁判所が相続権を奪う。
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どちらも結果として相続できなくなることに変わりはありません。しかし、手続きを要する廃除とは違い、欠格は特別な手続きなしに当然に権利を失うという特徴を持ちます。
本来の相続人が被相続人より先に亡くなっていることもあります。
この場合、すでに亡くなっている方の子どもが代わりに相続人となるケースがあります。これを「代襲相続」といいます。
代襲相続が発生するのは、死亡のほか、欠格・廃除により権利がはく奪された場合も含みます。
しかしながら、本来相続人となれた人物が放棄をした場合には代襲相続は発生しません。この違いには十分注意してください。
代襲相続や欠格などのほかにも、特殊なケースは存在します。
たとえば「相続時点でまだ生まれていない胎児がいる場合」や「実親と養子の関係」、「相続人が行方不明の場合」などです。それぞれ次のように扱われます。
相続権の喪失や代襲相続など、複雑な状況では専門的な判断が必要となることも多いため、疑問がある場合は早いうちに専門家に相談することをおすすめします。